「ТPP=自由貿易を問う」公開学習会レジュメ
講師:永田研二 2011.3.25
● ТPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる動き
・2月26日のさいたま市を皮切りに「開国フォーラム」(全国9ヶ所)始まる。金沢、仙台で中止に。
・政権に早くも動揺(玄葉国家戦略相「ТPPではなく、EPAだけでやっていくというのも一つの考え方」と同フォーラムで発言)。海江田経済産業相も「名誉ある撤退」発言
・政党レベルの反対運動として「ТPPを考える国民会議」(民主党の一部、社民党、国民新党、新党日本など180人の国会議員が参加)が発足、同日甲府市で集会。
・首都圏での市民の反ТPP運動も始まる(院内集会、経団連デモには400人が参加)。
・千葉県では農水産業13団体が3月2日、反対集会開催、2,000人が参加。また、千葉県議会が「ТPP不参加」の請願を採択(民主は反対)。
・クリントン国務長官「ТPPはアジア太平洋自由経済圏の基礎」(朝日3.10)
・大震災でいったんは後景化するが、復興をビジネスチャンスと見る米国。
●主な論点
1.ТPPは多国間の経済連携協定ではなく「日米自由貿易協定」
・ТPP参加国は現在9カ国(米国、ニュージーランド、豪など)。仮に日本が参加した場合の10カ国の総GDP(国内総生産)を国別に見ると、米国67%、日本24%、豪4.7%、その他(7カ国)4.3%。日米でGDP全体の91%。ТPPとは多国間経済連携協定といいながら実態は「日米自由貿易協定」である。
・菅首相は「アジアの成長に乗る」などといっているが、世界経済の成長エンジンである中国も韓国も参加していない。
・米国による「日中分断」「中国」封じ込めでもある(中国はASEAN+3を推進の立場)。
2.米国資本の前に「丸裸」になることであり、小泉「構造改革」を上回る規模で地方を破壊する
・郵政民営化は、人間にたとえれば、その血管をズタズタにした。ТPPは肉体そのものを破壊する。それでなくとも疲弊している地方において、自治体運営に伴うさまざまな事業にも米国資本が「自由化」の名のもと参入してくる。中小企業、地場産業は消滅する。
・加えて地域産業の大きな柱である農業、果樹、酪農業が米国資本の攻勢にさらされ、壊滅する。単に雇用の受け皿としての産業が崩壊するだけではなく、人口流出、生活基盤の破壊を意味し、地方の棄民化。
3.食料自給率は14%へ、340万人が失業、BSEなど危険な食物が大量に食卓へ
・農水省の試算によれば、現在40%(カロリーベース)の食料自給率は14%に。これに伴う雇用喪失は340万人(茨城県の人口を上回る)。失業率は10%台の危険性。
・BSEや遺伝子組み換え、国内では使用禁止の農薬や添加物を使用した食糧、食品が大量に食卓へ。ТPPは一切の例外を認めない貿易自由化。日本が米国の前に「丸裸」になることを意味する。
・輸出産業のために農業を切り捨てていいのか?(洪水、温暖化など天候不順による収穫減、メジャーの買占めによる価格吊り上げ、輸出国の需要増加による供給不安定→レアアース)
・日本は既に充分「開国」している。農産物の平均関税率12%(欧州20%、韓国62%)。
・同時に検討されている農地法「改正」は企業の農地所有で大規模化、効率化を促すとしているが、転売(土地ころがし)を合法化し、使用目的を変更(たとえば産廃施設)することで農地破壊を可能にすることを意味する。
・日本の農業の大規模化(輸出産業化)を主張する声もあるが、その場合、輸出先の小規模農業を破壊することにつながる点も考えるべきではないか?(NAFTAにおけるメキシコ)。
・「1.5%の農業GDPのために98.5%を犠牲にしていいのか?」(前原前外相)の問題(米国、仏、独も農業GDPの総GDPに占める割合は日本と大差ないが、日本以上に農業を保護している)。
・GDPに占める輸出割合は16%であり(輸入を含めても30%)、84%が内需。「通商国家」「貿易立国」のウソ。韓国は輸出比率50%、中国35%。
4.デフレを促進し、非正規労働者を増やし、賃金はさらに低下
・ТPPは従来のFТAやEPAの延長線上にあるものではなく、その意味で「農業問題」ではない。地方だけの問題でもない。政府はТPPを「地方」「農業」の問題としてクローズアップすることで都市部の労働者(消費者)との分断化を狙っている。
・ТPPは経済成長を内需拡大ではなく輸出を増加させることで達成しようとする。輸出による経済成長は中国など低賃金に支えられたアジアとの価格競争になり、勝ち抜くには国内労働者の更なる低賃金化→非正規化を招く。
・「安ければいい」との発想はデフレスパイラルを招き、労働者は労働力再生産のための消費すらできない。
・ТPPで検討されているのは24テーマ(別掲)。
5.ТPPは「安保」の延長線上にある「日米同盟の深化」
・米国の同盟管理は政治と経済を両輪(「安保2条」「年次改革要望書」)。
・「東アジア共同体」(米国離れ)に対する米国の巻き返し。小沢派への反撃。
・中国包囲網としてのТPP。
6.「先進国から中進国へ転落」議論の底にあるGDP信仰、環境、社会の持続性への視点を欠いた成長至上主義
・開国論の根っこにあるのは「成長至上主義」「GDP神話」。GDPだけが人間を幸せにし、そのためには何が何でも成長しなくてはならないという思想。これは資本の飽くなき利潤追求の表現でしかない。幸せを計る物差しがGDPだけというのはあまりに貧しい発想。成長より分配を。
・資源、エネルギーは有限。持続的な社会の追求こそが必要、成長至上主義は地球破壊を招くだけ。
・なぜ「先進国」でなくてはいけないのか?「中進国」はダメなのか?哲学なしの成長論。
・民主党政権下で問われるエネルギー政策、原発輸出。